NPO法人自死遺族総合支援センター主催DVD映写会とワークショップ

「自死・自殺への理解を深める~ダギー・センターの活動を通して~」参加レポート

実施日:2012年9月28日(金)
開催場所:TKP横浜駅西口カンファレンスセンター
参加対象者:自殺対策に取り組む行政職、民間団体の方

今、日本では年間3万人もの人が自死・自殺が原因で亡くなっていて、交通事故の死者数よりもはるかに多い状況が続いています。そしてたくさんの自死遺族の方が、周囲からの偏見や無理解によって苦しんでおられます。

この映写会とワークショップは、自死・自殺に対する偏見・無理解をなくすためには、どうすればよいのか、向き合うべき課題は何なのかを、広い視点から自死・自殺を考えることで、自殺防止対策を進めることを目的として開催されたものです。
講師を務められたのは、AIMSでもお手本にしているダギー・センターで長年にわたり活動されてこられた岩本喜久子さん(札幌医科大学講師・ソーシャルワーカー)でした。
対象が「自死遺族・遺児」ということではありましたが、AIMSの活動にも大変参考となるテーマでしたので参加させていただきました。

映写会では、まず、岩本さんが講演をなさり、その後、ダギー・センターに通っている自死遺族の方々自身が、自分たちの体験を、他の自死遺族の方々にも伝えるために製作したというDVDが上映されました。複数の自死遺族がセンターに通う前と現在の心の変化、家族が自死したことをどのように受け入れたかについて自ら語る内容のものでした。

岩本さんは、アメリカだけでなく日本でも、自死・自殺に対する無理解や偏見が現在でも多くあるが、自死された方の脳のCTを見ても明らかであるように、自死は防げるものではなく、病気が引き起こす発作的衝動であることが広く認知されていくことが大切である、と指摘されていました。
その後、グループに分かれてのワークショップとして、講演や、DVDで印象に残った言葉、自死への社会の偏見をなくす方法など話し合う場をもち 「自死であることを周囲に隠す風潮があるのは何故か?」「子どもにも事実を伝えるべきなのかどうか」「自死を防げなかったという後悔を遺族が持ってしまうことについて」などの問題点につき、参加者同士で自由な意見を活発に交わしました。話し合いには行政からの参加者もいらっしゃり、自死防止対策としての電話相談受付などの行政の取組についてもお話されていました。

映写会とワークショップを通じて、「本来感じなくても良い、世間の目を気にしたり、自責の念に駆られたりして、遺族も自死予備軍になるのを防ぎたい」というメッセージに深く感銘を受けました。

こうした課題は、自死遺族だけでのことではありません。病死や事故死などでも、遺族は繰り返し襲ってくる深い悲しみや説明の出来ない怒り、無力感、やるせなさ、寂しさなどによって、自死予備軍になる可能性があります。子どもであれば、なおさら対処の仕方が分からず苦しみ、自己コントロールを失ってしまうかもしれません。

ダギー・センターのドナさんの言葉にもあるように、「自分の悲しみや喪失感(グリーフ)を理解し、理解され、表現できるように導き、自己コントロール感を取り戻し、再び養っていけるようにすることが大切」だと改めて感じました。
(金子美紀)

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