Kids Hurt Too Hawaii 訪問記

今年1月4日にハワイ・ホノルルにあるKids Hurt Too Hawaii(以下「KHTH」)を訪れ、シンシア・ホワイトさん、伊藤ヒロさんにお話を伺ってきました。

KHTHはシンシアさんとヒロさんが11年前にハワイで始めた、様々な理由で親と一緒にいられない状況にある子どもたちや、悲しみ、トラウマを抱えている子どもたちをサポートしているNPO団体です。
お二人は元々アメリカ・オレゴン州のポートランドにあるダギー・センターで長く働いていらして、その後ハワイに移って、ハワイで活動するようになったとのことです。


KHTHでのプログラムは、概ね以下のように進みます。

18:00  子ども達とその保護者(親)がセンターに集合

18:00~18:30  全員で食事

18:30~20:00  オープニングサークル

年齢別のグループに分かれ、自己紹介やその時々のテーマにつき全員で懇談。
自由時間
それぞれ、やりたい遊びをする
クロージングサークル
グループでもう一度集まって、お話をして終了・解散。

このプログラムの中では、いくつかのルールを守る必要がありますが、それ以外は基本的に子ども達は自分たちでしたいことをして遊びます。
ルールをいくつか紹介すると、「I pass」。これは話をするときに、話をしたくない場合には、パスして話をしないということを認めるというルールです。子ども達の中には、自分の体験や感じていることについて、話したくないと思っていることもあるので、そのような場合に無理に話させることはさせず、パスして、話したくなったときに話せば良い、という姿勢で望むということです。
また、「Privacy and Confidentiality」というものもあり、KHTHの中で話したことについては、みんなが秘密を守り、外部で話をしないというルールを徹底することによって、その場所が、安心・安全なところと感じ、自分の感情や思っていることを素直に表現できる場所となるという効果があります。
また、子ども達は自分たちで何をして遊ぶかを決めることができますが、「Stay with Adult」というルールもあり、大人とともにいないといけない、というルールがあります。KHTHでは、年齢によって、子ども2名又は3名につき、一定のトレーニングを受けたボランティアの大人1名がつく、という体制になっています。
そのほかにも、「No Hitting」、「No throwing hard object」「Stop and I mean it」などのルールがあります。

また、施設はいくつかの部屋に分かれていて、それぞれの部屋で子ども達が別々の遊びができるようになっているのですが、そのうちの一つに、壁までクッションで覆われていて、大きなぬいぐるみがたくさん置かれている部屋があります。この中で、子供達はぬいぐるみを思いっきり投げたりして、いろいろな形で気持ちを発散することができます。この部屋は、子ども達に非常に人気があり、危険がないように一度に2名までしか入れないため、列ができることも多いとのことです。

KHTHのプログラムは、シンシアさんとヒロさんが働いていらしたダギーセンターのプログラムに非常に似ていますが、2つの点で大きく異なるようです。一つは、みんなで食事を食べるということ、もう一つは、施設内でのプログラム以外にもハワイという土地柄を生かして、サーフィンに行ったり、ピクニックをしたりと屋外でのアクティビティにも力を入れているということです。前者の食事をするというのは、ハワイでは人が集まるときには何か食事があるのが一般的、ということで、現在ではポットラック形式(持ち寄り)でやっているとのことです。後者の屋外活動は、ヒロさん自身が覚えている「子どもの頃に楽しかった思い出」が「外で遊んだこと」ということもあり、喪失体験をした子ども達の心をサポートするのには、このような外でのアクティビティも絶対に役立つはず、と信じてとりいれていらっしゃるようです。
我々AIMSでも音楽や演劇などの活動や体験を通じて子どもたちの心のケアをサポートしたいと思っていますが、KHTHでも同じような発想で活動をされていることを知って、その意を強くしました。

シンシアさんとヒロさんとは色々とお話しさせて頂きましたが、その中で印象深かったことをいくつか紹介します。
まず、シンシアさんからは、日本の文化では、死について人前ではあまり話さないというように思われているかもしれないけれども、日本で活動した経験(シンシアさんとヒロさんは10年以上前に1年弱日本で活動をしていたこともあり、また昨年の大震災以降何度も日本を訪れ、東北の支援を行っていらっしゃいます)に基づけば、「話しても良いんだ」ということが分かれば、日本人も自分の体験を話し始め、話すことによってグリーフワークになるというのは、日本もアメリカも変わらない、と言うことを伺いました。
また、ヒロさんから伺った、KHTHも最初始めたときは、たった2人の子どもたちと、教会などの場所を借りるところからのスタートだったけれども、子どもが2人いればグループになるし、小さくてもコンスタントに継続していくことによって徐々に周囲の方々からの信頼を得て、コミュニティに溶け込み、大きく成長していける、ということも大変励みになりました。

お話をする中で、KHTHとして、AIMSの活動を応援してくださるという了解を得られましたので、これからはKHTHの協力を頂きながら、活動を進めていきたいと思っています。(高井伸太郎)